国鉄労働組合東日本本部業務連絡報 2021年 6月13日 第1582号より掲載

6月9日、JR東日本ステーションサービス(JESS) との「2021年度夏季手当等に関する申し入れ」(国労東日本申第19号、2 021年5月18日付)の交渉に臨みました。

【組合趣旨説明】

1.新型コロナウイルス感染拡大の影響は長期化し、JR東日本の「2020年 度決算」は会社発足初の純損失の計上となった。JR東日本は「変革2027」 で予測した未来が早まったとして「変革のスピードアップ」を明言し、早期実 現に向け業務の全般的な構造改革を進めて行くとしている。今後、「駅業務 サービスの戦略会社」としてのJESSにおいても、コスト削減に向けた 様々な「変革」が求められ、そのことは、社員の労働条件にも多大な影響を及 ぼすことが推測される。

2.JESS管内の各自治体のコロナ感染状況については、以前として高い数 値であり、4月28日からは3度目となる「緊急事態宣言」が東京都で発出さ れ、首都圏4県(群馬・さいたま・千葉・神奈川)においても「蔓延防止等重 点措置」の適用、再延長、さらに、変異株の拡大と緊張感は長期化し、現場の 社員は目に見えないウイルスの感染におびえつつ、JR東日本グループの一 員として「安全・安定輸送」を担っている。

3.今年は東京オリンピック・パラリンピックも予定され、正常な事業運営の JESSと夏季手当交渉行う 2 ためにも引き続きの新型コロナウイルス感染防止対策は必須であり、引き続 きの感染防止対策を求める。

4.こうした中で迎えた夏季手当交渉は、新賃金回答においての「ベア」見送り、 また、この4月からは「JESSビジョン2023」も策定され、会社の持続 的な成長を担う社員とそれを支える家族の期待・生活実態を反映した要求と なっているので、真摯な議論を要請する。

【会社現状認識】

1.4月から新しい3カ年計画「JESSビジョン2023」を策定した。これ までの経営計画でにおける社員の地道な努力により、成長基盤の確立が図れ た、感謝を申し上げる。新型コロナウイルス感染症の拡大から1年半が過ぎ、 自らの感染や家族への感染不安の中、公私問わず感染対策を行っていただい ている、結果、クラスターも発生させずに推移している。JR東日本の駅業務 という極めて公共性の高い業務、使命感・責任感で職務を全うしていただいて いることに、会社として敬意を表す。

2.3月期決算は、増収増益であった。営業収益については、13箇所の新規受 託や、前年度の新規受託26箇所の平年度化により増収となった。一方、費用 については、社員数の増加やタブレット端末通信費、各システムの使用料など の大幅な増加があったが、コロナの感染拡大により多売期の混雑対応の縮小、 自宅待機などの人件費の減や各種イベントの縮小による費用減、また、この他 のコストダウン効果もあり、営業費用全体では大幅に下回り、その結果、大幅 な増益となった。

3.当社はJR東日本の重要子会社19社の1社であり、グループ全体の経営状 況では極めて厳しい結果であり、会社発足以来、初めての損失を計上した。2 021年度の予想では、連結営業利益、当期純利益の黒字への転換予想をして いるが、4月以降の緊急事態宣言の状況など、足元の鉄道営業収入は50%で、 黒字化前提の収入に達していない中で、あらゆる面からのコスト削減が求め られ、当社においては受託契約料が見直され減収となる。これまでも何度か減 収はあったが、収入自体が減収となるのは初めてである。次年度予想では、す れすれの黒字であるが、この数字も相当なコストダウンを行う前提での数字 である。

4.厳しい経営環境の中、社員・家族が「当社で働いて良かった」と感じてもら うためにも、健全な危機感を持つことが必要であり、時代の変化を見据え業務 品質を向上させ、JR東日本グループの駅業務戦略会社として業務をしてい くことが必要である。仕事のやり方についても、これまでのやり方にとらわれ ることなく見直し、コストダウンを行っていくことも必要である。

5.これらの状況を踏まえると、夏季手当賞与の支給にあたっては、経営環境、 営業収益見込みを踏まえると、これまで以上に極めて慎重に判断する必要が あると考えている。真摯に議論を行い会社として検討していきたい。

【主なやり取り】

<組合側> ・まず、JESSの決算などで議論したいが、営業収益(契約料)については、 対前年の▲5億92百万円と通期予想を立てているが、この捉え方は、契約料が 切り下げされたとの受け止めで良いのか。
<会社側> ・契約の中身としては、窓口閉鎖や駅の無人化等の減要素もあるが、何今年度も 新規受託があることを想定している中で、契約金が下がっている事であり、単価 が下がっているという理解である。
<組合側> ・この間、懸念材料として議論してきた問題が、今年度の契約で現実となった。 JR東日本としても、グループ会社社員の労働条件に密接に関係するので、コミ ュニケーションをとり進めるとの認識が示されていた。決算予想上は、赤字では なく黒字であるが、これがコミュニケーションを取った結果と受け止めて良い か。
<会社側> ・詳細は把握していないが、JESSとしては利益が出るという想定で契約した 結果と受け止めている。
<組合側> ・収入の9割が人件費である会社にとっては、今回の契約は厳しいという事か。
<会社側> ・そうである。 <組合側> 4 ・社員からすれば、同じ業務をしている中で、契約料見直しとなると、しっくり こない。例えば、次年度、JR東日本の経営が回復した時には、コロナ前の水準 に戻すことをJR東日本に求められたい。
<会社側> ・今年度契約はコロナ禍であり、これを基本に考えていくべきではないと思う。
<組合側> ・次年度予想の純利益は、1千5百万円と予想しているが、20年度の増益効果 をもたらした、多売期などの超勤人件費減少や行事・イベント等の費用減を通常 に戻した数字で計上しているのか。
<会社側> ・費用については、前年度の横ばいで抑えれば、1千5百万の利益が出ることを 予想している。
<組合側> ・という事は、イベントなどが無かったとしての横ばいか。
<会社側> ・そうである。従って、昨年の費用減につながったイベントや人件費がかさむ ことも予想され、コストダウンが相当重要になって来る。
<組合側> ・JESSとして収益事業を行う等の検討はされていないのか。
<会社側> ・現段階ではない。仮に、行えるようにしても、今の当社の中では難しい。
<組合側> ・今後の受託計画はどうなのか。
<会社側> ・オリパラ以降になると思うが、成案となり次第、JR東日本の各支社から対 応機関に説明があると思う。
<組合側> ・2025年までのみどりの窓口廃止計画と、同時に「話せる券売機」の設置拡 大も発表されたが、それに伴いオペレーターも増員となるのか。
<会社側> ・現行は、19駅で10人弱の配置であるが、拡大すれば増える。
<組合側> ・先ごろ、JR東日本のグループ会社内における副業が説明されたが、JESS は受け入れ先のエントリー(募集)しているのか。
<会社側> ・現時点としては、当社として受け入れのエントリーはしていない。
<組合側> ・了解した。決算については、引き続き、今後の第1四半期決算の状況なども踏 まえて議論したい。続いて、夏季手当についての議論に入るが、今回も、支払い 基礎については所定内賃金とし、その上で【2.5カ月】を求めた。せめて、生 計費に基づき家族手当を基礎額に含めることは出来ないのか。
<会社側> ・会社とすれば、限られた原資の中で決めることになるので、家族手当を基礎に 含めれば、家族手当のない社員配分が減ることになる。また、家族手当について は、この間、生計費の意味も含めて改善を行ってきているので、夏季手当につい ては現行で妥当と考える。
<組合側> ・この間、経営は右肩上がりであり、各種引当金についても積み上げてると推測 する。家族のいる社員からすれば、切実な要求であり、原資を増やすことも含め て引き続きの検討を求める。
<会社側> ・意見は受けとめる。
<組合側> ・東京都の出先機関である「東京都労働相談情報センター」の集計では、全都平 均で対前年マイナス4.03%となっているものの、額では【723,001円】 である。JESSの平均支給額は上がってきているものの、残念ながら、世間的 な数字と比較して劣っていると言わざるを得ない。
<会社側> ・18年の制度改正以降、毎年、労働条件に関しての施策を行い、昨年春の特別 一時金や今年のカタログギフト等、時々で可能な範囲で行ってきた。思いとして は理解するが、会社としてもやみくもに会社の利益を追求しているわけではな いので、ご理解を頂きたい。
<組合側> ・家計への影響では、天候不順などにより10年ぶりに野菜が高騰し、加工食品 につても様々な要因で高騰し直撃し厳しい夏になる。ぜひとも、そうした社員の 足元、家計への影響も加味して判断を求めたい。
<会社側> ・会社の思いは先ほども言ったが、総合的に判断する。
<組合側> ・今回、新型コロナウイルス禍の中でも日々「安全・安定輸送」を担っている社 員の労苦に応えるために、一律3万円の支給を求めると共に、新型コロナウイル スの感染防止対策を求めている。 ・最近の事象であるが、稲田堤駅で新型コロナウイルス感染について、職場から 事象報告と問題の指摘と是正・配慮を求めれているので、情報提供をする。1つ には、5月23日に社員家族のコロナ感染が判明し、当然、社員も濃厚接触者と なり検査、その後、社員は25日に陽性が判明した。保健所の追跡調査で、稲 田堤では他社員2名についても濃厚接触者にあたることから、その旨を24日 に管区長に伝え、自宅待機とはなったものの、29日まではPCR検査を行う 指示がなく、結果として職場感染が拡大してしまったとのことである。 2つには.入院中(肺炎)にも関わらず、連日管理者から検温・血圧数値の報 告を求められ、さらに、退院の目途も経っていない中で勤務処理の扱いや、保 健所からは入院先について、明らかにしないとの指示であるにも関わらず、必 要に聞いてくるなど、マニュアル通りの対応であり、配慮が無いとのことであ る、今後、同じようなことが無いように求めたい。
<会社側> ・対応の遅れについては、感染の判明が出るまで一定の期間があり、今回は対応 の遅れでの感染拡大ではないと考える。会社としても、JR東日本のやり方も参 考にしながら濃厚接触者に対する自宅待機の扱い、勤務免除も行っている。また、 決めたマニュアルを守ることに主眼を置いているわけではなく、感染拡大防止 や業務に支障がないように対策を取っているという認識である。実際入院して いる社員への対応については、症状も様々であり、必ず本人でなくとも家族から の状況報告等、会社としては把握しておくべきと考える。手段を目的化している わけではないことは申し上げておきたい。
<組合側> ・配慮を求めておく。また、感染防止の備品、例えばマスクを着用した際にゴム が切れてしまう等、質が悪くなったとの報告がある。購入は、支店・管区だと思 うが、情報提供をしておく。 ・感染防止対策で、空気清浄機が配備され、その事についてはお礼を申し上げる が、問題は配備数である。職場の規模よりも多い配備がされている。備品等の配 備については現場とのコミュニケーションを取り配備をお願いしたい。
<会社側> ・意見を聞かずに配備はしないと思うが、職場からの意見として受け止めたい。
<組合側> ・突然職場に宅配便で備品が届くことがあり、出来れば備品の注文や到着関係等 事前の情報提供を御願いしたい。

<会社側> ・管理者のいない職場の意見として受けとめる。 <組合側> ・ワクチン接種の関係で、JR東日本は接種等の勤務の扱いや副反応が出た場合 の対応を明らかにしたが、JESSとしての対応はどうなっているのか。また、 接種を希望しない社員も出ることも予想され配慮を求める。
<会社側> ・JR東日本からの出向者を受け入れていることもあり、混乱のないようにJR 東日本に準じた扱いにすることとした。希望しない社員の配慮は必要である。
<組合側> ・了解した。本日は、夏季手当要求で議論をした。夏季手当のポイントは業績の 反映と認識する。現時点で、明らかなのは決算であり、増収増益である。ワクチ ン接種という明るい兆しが見え始めているが、現場最前線の緊張感は続く。会社 には、社員・家族のそうした苦労や、足元の実態を見ていただき、判断していた だく事を求めて本日の交渉は終了したい。
<会社側> ・業績がポイントは否定しないが、今年度の費用からの引当金であり、足元の 業績も注視し、総合的に判断をしていきたい。 ・次回については、窓口間で調整したい。 <以上>