2021年夏季手当2.5ヶ月を要求

国鉄労働組合東日本本部
業務連絡報 2021年 5月14日 第1574号から転載

2021年度夏季手当等に関する申入れ

 財務省が発表した2019年度の法人企業統計によると、大企業(資本金10億円以上、金融・保険業を含む)の内部留保は459兆円と前年度から10兆円増えました。
内部留保が最高額を更新するのは2008年度以降、12年連続となり、安倍前政権が発足した2012年度との比較では、経常利益が1.4倍、内部留保が1.38倍、配当金が1.64倍に増える一方、労働者の賃金は1.05倍と横ばいに留まっています。
大企業を優遇してきたアベノミクスのもとで増えた利益は、賃金には回らず、株主配当金と内部留保に回ったことを示しています。
 昨年からの新型コロナウイルス感染症拡大は、国内経済活動に大きな影響を与え、JR東日本においても会社発足後初めての「赤字」となりました。4月28日に発表した2020年度期末決算では、単体・連結決算は2期連続の減収かつ過去最低となり、初めて純損失を計上しました。
 今後の動向は、新型コロナウイルス感染状況に左右され、ワクチン接種は始まってはいるものの、全体が接種するまでには時間もかかり、変異種の全国的拡大も懸念される中では、引き続き予断を許さない状況が続くといえます。
 コロナ禍の中で迎えた昨年の夏季・年末の手当回答は前年を大きく下回り、さらに2021年度の新賃金回答では、「昇給係数2」という結果となり、JR東日本の将来を担う若手社員からは落胆と失望の声が広がっています。
 会社は、決算と同時に「変革のスピードアップのための投資計画」を発表し、「収益力向上に資する成長投資を積極的に実施していく」としています。
成長投資は否定しませんが、この難局を乗り越えるためには、JR東日本グループを支える社員と家族のモチベーション維持・向上が必用不可欠であり、今こそ「人への投資」も行うことが重要です。
 以上の趣旨から、2021年度夏季手当等に関して、以下の内容にて申し入れますので、早期に団体交渉を開催し、誠意ある回答を求めます。

「申し入れ項目」

1、2021年度夏季手当の支払い額は、2.5ヶ月支払うこと。

2、2021年度夏季手当は、6月25日(金)まで支払うこと。

3、現行の支払い条件などを以下の通り改善すること。

(1)「成績率」適用の「増減率」は、10/100を限度として適用すること。
(2)満55歳以上の社員へは、若手社員への技術技能継承や人材育成の観点から一律3万円加算し支払うこと。
(3)「期間率」の適用は、私傷病休暇と妊娠・出産に係る休暇を除外、もしくは緩和措置を講じること。

4、コロナ禍での業務に対して以下の通り改善を図ること。

(1)昼夜にわたり日々安全・安定輸送を担っている社員・エルダー社員に対して一律3万円加算して支払うこと。
(2)医療従事者社員に対して一律5万円加算して支払うこと。
(3)テレワーク手当を新設し、取得した社員・エルダー社員には取得日数に関わらず月5,000円支給すること。
(4)新型コロナウイルスに感染した社員・エルダー社員の私傷病休暇については、「期間率」から除外すること。

以上

「ダイジェスト版・No.160,161,162」

「第1回交渉・組合側より趣旨説明を行う」

2021年5月28日 第1577号国労東日本本部・業務連絡より転載

国労東日本本部は本日、「2021年度夏季手当等に関する申し入れ」(国労東日本申第18号、2021年5月14日付)に基づく、第1回交渉に臨みました。
第1回目交渉は、組合側より夏季手当要求の趣旨説明を行いました。
趣旨説明のポイントは、①世界経済の状況について、②日本経済の状況について、③政府が進める社会保障改悪について、④JR東日本の経営状況について、 ⑤JR東日本の内部留保について、⑥国労組合員の生活状況について、⑦JR東日本の生活状況について、⑧まとめにかえて、からなる主張を展開しました。
とりわけ、趣旨説明の締めくくりでは、「会社は、将来に向けた経営や少子高齢化が見込まれるもと、『赤字』を理由に厳しい経営環境を強調し、社員に対して『変革2027』に基づく一層のコストダウンと自己改革を求めている。しかし、全ての社員やグループ会社社員のこれまでの労苦に応え、作業や仕事のモチベーションを向上させる、雇用と家族の生活を守り、将来に向けた不安解消、グループ一体となって厳しい経営環境を乗り越える上からも、『全社員とグループ会社社員に対して安心感が持てる、今まで以上の会社からの力強いメッセージ』の発信が重要」と強調し、国労東日本本部の「基準内賃金×2.5ヶ月・6月25日(金)までの支払い遵守」と「社員一律3万円」「医療従事社員一律5万円」等の付帯要求に誠実に応えることを求めました。
組合からの趣旨説明後、会社側より、①業績と足元の状況、②経済動向、③中長期的な見通し、④夏季手当交渉の基本スタンスが示され、「今後、真摯に議論を進めていく」とし、第1回目交渉は終了しました。
尚、次回交渉については決まり次第お知らせをします。
以下、「2021年度夏季手当要求根拠メモ」を添付資料としますので、ご活用ください。

業務連絡報2021年 6月 4日  第1579号から掲載

東日本本部は6月3日、「2021年度夏季手当等に関する申し入れ」(国労東日本申第18号、2021年5月14日付)

「第2回交渉」

 交渉は、冒頭会社側より資料に基づく現状認識の説明から再開しました。会社からの説明と主なやり取りは以下の通りです。

【資料①】損益の推移

【資料②】景気動向指数(CI)(H27=100)・景気ウォッチャー調査

【資料③】外国為替相場・原油価格

【資料④】金利動向(長期国債)・世界経済の実質GDP成長率

【資料⑤】完全失業率と有効求人倍率の推移・生産年齢人口の推移

【資料⑥】期末手当支給月数の推移

*会社資料は別紙参照

[会社の現状認識]

<損益の推移>

・令和2年度の期末決算は、新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受け、営業収益・運輸収入共に2期連続の減収且つ期末決算としては過去最低となった。厳しい経営状況を踏まえ、単体にて大幅なコストダウンを実施したものの、営業費用が営業収益を大きく上回った結果、営業利益はマイナス4,785億円となり、期末決算としては会社発足後初めての営業損失を計上した。

・大幅な減収に対応するため社債やコマーシャルペーパーを発行したことで、会社発足から30年以上かけて約3兆円を返済してきた有利子負債が1年間で約1兆円増加するなど、財務的にも厳しい経営状況にある。

・足元の状況では、3度目の緊急事態宣言等の影響を受け、4月の鉄道営業輸入は一昨年の約56%、ゴールデンウイークの新幹線・特急列車のご利用状況は一昨年の約27%と、引き続き厳しい状況となっている。赤字が続くことで、企業の体力が低下していくことは論を俟たない。本年度は「決意と実行の1年」としてグループの総力を挙げて黒字化を実現していかなければならない。

<日本経済を取り巻く状況>

・5月の月例経済報告では、個人消費や企業の業況判断が下押しされたことを踏まえて、「景気は、新型コロナウイルス感染症の影響により、依然として厳しい状況にあるなか、持ち直しの動きが続いているものの、一部に弱さが増している。」との認識が示されている。4月に3度目となる緊急事態宣言が発出され、外食やレジャーは感染症に伴う自粛の影響で引き続き弱い動きとなっている。

・海外の先行きについても、「持ち直しの動きがみられる」としつつも、「感染の再拡大が経済活動に与える影響によっては、景気が下振れするリスクがある」としている。

・グルーバル化の進展の中で、日本経済も世界経済の影響を受けている。5月に発表したOECDの見通しでは、ワクチン接種の進捗や財政支援等により、各国の経済回復に差が生じており、変異株の拡大により更なるリスクが高まり経済回復が遅れる可能性があると懸念し、インバウンド等への影響もあり注視していく必要がある。

<基本スタンス>

・夏季手当の議論にあたっては、会社の持続的な発展こそが、社員還元のさらなる充実、働きがいの向上、社員・家族の幸福の実現につながっていくという前提に立ち、直面する厳しい経営環境や経営課題について改めて認識を共有することが重要である。その上で、「変革2027」のレベルとスピードを上げ、新たな次の成長戦略を実現していくためには、社員一人ひとりが健全な危機感を持って積極的なチャレンジや自己啓発などに取り組んでいくことが不可欠である。

・期末手当については直近の業績、特に営業利益を考慮することとなるが、令和2年度の期末決算におけるマイナスの営業利益、会社発足後初めての大幅な赤字を計上している。足元の状況は、3度目の緊急事態宣言等を受け、4月の鉄道営業収入、GW中の新幹線、特急列車共に、引き続き厳しい状況となっている。

・今期の夏季手当の議論については、会社発足後初めての大幅な赤字を計上する非常に厳しい経営状況であり、且つ、今後の状況も未だ不透明である中、新たな成長戦略を実現していくため、収益力の向上と構造改革、系統を超えた新たな価値の創造に対する一層の努力を社員一人ひとりにお願いすると共に、支給水準については例年に比べて極めて慎重に判断をしなければならない状況にある認識のもと、総合的に判断していく必要があると考えている。

・早期合意に向け真摯に議論したい。


<組合側>

・内部留保については前回も主張したが、2兆8千億円の内部留保の1.7%を取り崩せば、私たちの要求は実現可能である。経営が堅調な時に「将来のために」として積み上げてきた内部留保を、厳しい経営の時だからこそ、社員の安心感のためのメッセージとして活用すべきである。

<会社側>

・昨年度の決算が5千億円を超える赤字決算で、日々の支払いも含めてキャッシュコントロールをしっかりとやらなければならない。コマーシャルペーパーや金融機関からの借り入れ、有利子負債も増えている状況である。そうした中での、夏季手当の判断は厳しい状況下にある。堅調な時は社員還元よりも内部留保に積み上げたとの主張であるが、会社としても蓄えた部分を新たな投資を行い、建物や生活サービス、また車両への投資などを通して結果、社員への還元も行ってきているところである。一概には積み上げている事ではなく、総合的に社員還元にもつながっているので理解いただきたい。

<組合側>

・コロナ関係で会社の考えを聞きたいが、この間の感染防止対策における社員・グループ会社社員の日々の努力・奮闘については会社も理解していると思うが、一方で、感染に対する会社の対応は政府の指針に留まっているのが現状である。変異株の感染拡大も懸念されている中で、①希望する社員に、抗体検査やPCR検査を会社の責任において実施する考えはあるのか、②会社独自にワクチン接種をしていく考えはあるのか。

<会社側>

・1年以上にわたる不安と緊張の中、各職場で感染防止対策を取りながら、日々の安全とお客さまに安心してご利用していただけるような取り組み、尽力には感謝を申し上げる。会社としても社員が安心して働けるように、私傷病の提出書類免除や結婚休暇取得の延長、自宅待機の取扱い等、柔軟な対応を実施してきた1年である。ワクチン接種については最近報道されているが、職域接種の状況については、検討の段階であり示せる内容ではない。また、PCR検査・抗体検査については、症状によっても違うが厚生労働省の指針、あるいは保健所の判断が基本的なスタンスである。また、ワクチン接種における勤務の取扱いについては、安心して働けるように、副反応が出た場合は1日の勤務免除が出来るように、通達を示してきたところであるので、ご理解を頂きたい。

<組合側>

・20年度の期末決算では、人件費は対前年▲555億円であった。会社は、この間「株主・お客さま・社員は平等」との認識を示してきたが、株主配当は重視し、安全・サービスに直結する「維持更新費」の削減を見た時に違和感を覚える。

 持続的な発展のためには、「企業は人なり、人は宝なり」を忘れてはならない、社員・家族の期待に応えることを強く求める。

<会社側>

・会社発足後初めての大幅な赤字、且つワクチン接種も進んでいない中で、先行きは不透明である。今年度については、社員数の減少や4月の定期昇給の関係で計画値よりも下がる見込みである。様々意見はあるが、成長投資、人材投資はしっかり行い、種をまき育てていく。足元の状況、中長期的な見通し等も踏まえて議論し、総合的に判断していきたい。

<組合側>

・通期業績予想では、黒字を目指すとしているが、ワクチン接種の進捗や「変異株」の感染状況では先が見えなく、「外部要因」で業績は左右される。JR他社では、出向や一時帰休などを実施しているが、JR東日本としての、考えはどうなのか。

<会社側>

・昨年、就業規則を見直したが、これまで大きな減便も行わず、助成金申等の申請は行っていない。この後の状況は分からないが、ワクチンの状況や「変異株」の蔓延拡大等、会社だけでコントロールすることは不可能であり、状況に応じて判断することとなる。自助努力も大切であるが社員が安心して働けるためにどうするかを念頭に取り組んでいきたい。

<組合側>

・社員が安心して働けることは大切であり、メッセージを引き続きお願いする。

<会社側>

・了解した。

<組合側>

・成績率についての、増の財源はどの様になっているのか。

<会社側>

・これまでも公正・厳格に取り扱ってきたが変わりはない。財源と言うよりも個々の状況を見ながら適用していく。

<組合側>

・コスト削減の対象にはなっていないとの認識で良いか。

<会社側>

・認識の違はないと思うが、公正・厳格に取り扱う。

<組合側>

・コロナの収束はまだ先が見えないが、収束後は昨年の「GOTOキャンペーン」に見られるような一定の回復は見込まれる。グループ年次計画で社長は「トンネルの先には必ず明るい未来が待っている」と言っているが、コロナの長期化で社員は息切れが出始めている。そろそろ「トンネルの先の明るい未来」を見せて欲しい。

<会社側>

・コロナの収束が見えれば、国内旅行需要は返って来ることを想定しながら、対応をしていく。一方で、ビジネス需要は働き方が変わってきている中で、100%と戻ることは厳しく、そうした社会の状況化での事業の再構築をしているところであり、なるべく早く「トンネルの先の明るい未来」を見せられるように実行していきたい。新しい取り組みも社員にお願いをしているが、当社の「一番の宝は人材」であり、どの様な還元が出来るか会社の命題として検討し夏季手当の判断もしていきたい。

<組合側>

・株主重視の姿勢を見た時に、会社の「宝は人材」には違和感を覚える。価値を生み出しているのは社員であり、赤字であろうと電車を動かすには人がいる。先ほど、内部留保の活用は主張したが、わずかな切り崩しで支払いは可能であり、特別な要求ではない。

<会社側>

・株主配当と期末手当は直接的な関係はない。ステークホルダーの1つとして株主を意識するのは当然である。株主配当では、一昨年が165円、昨年は100円で4割が減っている。夏季手当については、議論を経て決定していく。

<組合側>

・直接的な関係はないにしても出所は一緒である。政府に頼らない自主的な経営を続けていくとしているが、自己責任で社員への押しつけ感がある。若い人に聞くと、夏の一時金でローン返済が出来なくなる不安がある中で、会社が示した「副業」を好意的にとらえる人もいるのが実態である。

<会社側>

・今回の「副業」は、期末手当の水準を意識しての説明ではないので、御認識いただきたい。

<組合側>

・社員の受け止めはそうした実態である。

<会社側>

・このタイミングでの説明は、そうした受け止めの危惧もあったが、あくまでも経験を積み、視野を広げるなどの社員の成長を作るための1つである。

<組合側>

 様々な切り口から議論した。組合としても会社の厳しい現状は認識している。その上で、先ほど、副委員長からも昨年の人件費削減については意見した。2019年度とは単純比較が出来ないが、昨年は夏・冬の手当年間月数で、▲1.475ヶ月であり、新賃金回答時の基準内賃金で換算すると、約50万円の減収である。

さらに55歳未満の社員では、定期昇給の半減、業界では東日本ショックと言うらしいが、生涯賃金を考えた時には影響は甚大である。

 ある職場で、夏季手当について緊急調査を行い、多くの社員がローンの返済に夏季手当を充当する予定があり、非常に悩んでいるとの声が寄せられている。確かに、コロナの長期化、経営への直撃を社員は理解しているものの、2019年のコロナ前の状況で、生活設計を組んでいる社員・家族からすれば、一定の我慢は分かるが、生活設計はどうしてくれるのかが正直なところである。

 さらに追い打ちをかけるように、天候不良や中国の需要拡大、国際相場への投機マネーの流入など、要因は様々であるが、野菜や加工食品が高騰し、家計には厳しい夏になると予想されている。

 今年は、黒字化に向けた「決意と実行」の年として、先般提案のあった「柔軟な働き方」「副業」等、持続的な成長に向け社員の働き方も大きく変わろうとしている中にあって、「頑張れ」だけでは長続きしない。

 例年のスケジュールからすれば、今後、経営判断を迎えることになる。先ほど会社からも成長投資同様の人材投資、あるいは、「宝は人材」との認識が示されたが、社員・家族の足元を直視し、国労要求にそった回答を求め本日の交渉は終了したい。

<会社側>

・次回については、窓口間で調整したい。

<以 上>

第2回交渉会社資料

国鉄労働組合東日本本部業務連絡報 2021年 6月10日 第1580号

JR東日本が夏季手当回答を示す 2.0ヶ月、6月29日(火)支払い本日、「2021年度夏季手当に関する要求についての申し入れ」(国労東日本 申第18号、2021年5月14日付)の

第3回交渉で回答

が開催され、以下の回答が 示されました。 

国労東日本本部としては、「今回の要求は、会社を取り巻く環境や厳しい経営 状況を組合としても踏まえつつ、社員・家族の生活維持に向けたギリギリの要求 であった。第1回・第2回交渉でも主張したが、すでに会社が明らかにしている 成長投資同様に、社員・家族にも同等の投資を求めた。本日の示された回答は残 念ながら、到達していない」とし、再考を求め持ち帰り検討としました。 

回答内容は、以下の通りです。 

【社員諸元】 

支払基準額 基準内賃金×2.0ヶ月 

◆支払日 6月29日(火)以降準備でき次第 

◆平均支給額 平均基準内賃金 330,797円  夏季手当平均支給額 661,600円 ◆社員数 49,500人(5月1日現在) 

◆平均年齢 39.4才 

【エルダー社員諸元】(支給基準額・支払日は社員同様) 

◆平均支給額 基礎額平均 190,274円 

 支給額平均 380,500円 ◆社員数 10,200人(5月1日現在) 

◆平均年齢 62.7才 

以上 

妥結・整理について

   国鉄労働組合東日本本部業務連絡報2021年 6月11日  第1581号

1.国労東日本本部は5月14日、JR東日本に「2021年度夏季手当等に関する申し入れ」(国労東日本申第18号、2021年5月14日付)を提出、同時に、コロナ禍の長期化による経営への直撃の中で、春闘交渉に続き厳しい交渉が予想されることから、指示第20号(2021年5月15日付)を発信し、取り巻く諸情勢の共有化から、夏季手当に臨む国労の基本スタンスと取り組みについて明らかにし、回答が示されるまでが重要との位置付から、①東日本本部としての情報発行体制の強化、②地方からの夏季手当獲得の取り組みとして12支社への要請書の提出、と東日本本部・地方本部・地区本部一体の運動構築に向けて努力をしてきました。

2.交渉については、5月28日の第1回交渉(組合趣旨説明)、6月3日には第2回交渉(会社現状認識)、昨日の第3回交渉にて回答が示されました。

回答にあたって会社は、「現在の経営状況を踏まえれば非常に厳しい判断にならざるを得ないが、一方で、当社の社会的使命の遂行のために、社員一人ひとりが職責にひたむきに尽力していることを重く受け止め」として、「2,0ヶ月分」とする回答を行ってきました。

国労としては、「社員のやる気、安心感に応える会社のメッセージとしては不十分」、「コロナ禍の中、歯を食いしばって業務遂行している社員の頑張りに応えていない」、「職場では離職者も出ている。人材の流出を食い止めるためにも再考を求める」、「コロナ以前に生活設計を組んでいる社員は、住宅ローンなどの支払いに悩んでいる」等と、繰り返し再考を求めました。

また、例年の翌日正午の回答期限についても、見直しを求めましたが、「支払い日からの逆算をしてのシステム上の理由から困難」である旨が示され、こうした中で、国労としては、「成長投資同様に求めた国労要求に到達していない」として、席上抗議し持ち帰り検討としました。

3.今期の夏季手当交渉においても、JR東日本においては社員の多く(約4万名)が組合未加入の中で迎え、且つ、失われた労働組合への信頼獲得に向け、労働組合だから出来る取り組みとしての宣伝をする中から理解を得、組合未加入者の不安・不満な気持ち・声の代弁者としての交渉強化が求められました。

また、新賃金回答においての一部「社友会」が行ったコメントでは、「業績の復活と更なる成長に向け、ともに歩む期待を込めたもの」と、どの様な回答が出ても評価する姿勢を示し、社員の思いとは乖離していると言わざるを得ない宣伝を行っています。その中で、一部職場の取組みとなりましたが、緊急アンケートを取り組み、社員の実態や切実な「声」を集約し、「ダイジェスト」版にて明らかにすると共に、「社友会」情報とは違う社員の声を会社に訴えてきました。

4.今後も会社は、聖域なき「コスト削減」、構造改革に向けた施策を進めてくることは必至であり、職場にある不平・不満の集約、置かれた状況下で出来ることの実践から、引き続き、各地方・職場から、「労働組合」の必要性を訴え、組織強化・拡大に向けた運動の強化を図ることとします。

5.持ち帰り検討としていた夏季手当回答の扱いについては、他労組が先行妥結した中での会社の「最終回答」であることを踏まえ、社員・家族の生活に配慮することを考慮し、中央本部とも相談の上、回答期限である本日12時をもって妥結・整理することとします。

JR東日本との夏季手当交渉は整理をみますが、新型コロナウイルス感染防止対策やワクチン接種など、社員が安全に安心して働ける労働環境・労働条件改善を会社に求めて行きます。

また、JRの各グループではこれから夏季手当交渉の山場を迎える会社も多くあり、引き続き、要求獲得の取り組みから、私たちの喫緊の課題である組織の強化・拡大に向け奮闘する決意です。

以上

ダイジェスト版No.166/6月10日・夏季回答