JR貨物会社 <2021春闘・新賃金交渉>

〈貨物会社団体交渉〉

第1回交渉「2021年度新賃金引き上げに関する申し入れ」で趣旨説明を行う。

本部は本日(2月26日)、『2021年4月1日以降の賃金引上げに関する申し入れ』(国労闘申第6

号)に基づく団体交渉を行い、①.菅政権下における金権腐敗政治の現状。②.新型コロナウイルス感染に伴う国民生活の現状と賃金引上げの重要性。③.貨物会社の現状並びに労働者と家族の生活実態。-などを中心に以下の趣旨説明を行った。

【はじめに】

 日本経済は、米中貿易摩擦などの経済環境の悪化にくわえ、一昨年末、中国・武漢市を中心に発生した新型コロナウイルス感染症はパンデミックを引き起こし、経済活動の停滞、雇用情勢の悪化、収入不安による消費支出の低下はもとより、国内においても中小企業を中心に企業倒産や業績悪化を理由とした解雇や雇止め、労働条件の切り下げなど「弱者へのしわ寄せ」として顕著に表れている。

政治と金をめぐる問題も河合議員夫妻の公職選挙法違反に続き、「桜を見る会」をめぐる政治資金規正法違反は、公設秘書への略式命令に対し安倍前首相は不起訴処分とされ、吉川農水相が贈収賄事件で在宅起訴される事態など、腐敗政治は常態化し政治不信はますます増大するばかりか、菅政権となっても新型コロナ感染拡大に歯止めはかからず医療体制崩壊の危機を招き、時短営業に対する補償も後手後手に回り、政権は混迷を期しており菅政権に対する不信感は増すばかりで批判の矛先は内閣支持率の急落として顕著に表れている。

【日本経済の動向】

2021春闘を前の1月19日、日本経団連は、経営側の春闘の指針とも言える経営問題研究委員会報告を発表したが、「業績横並びや全ての企業での一律賃上げは現実的ではない」として、各企業の労使は雇用改革を中心に置くべきとの主張をしている。

各企業の倒産の現状は、「全国企業倒産状況」によると新型コロナウイルス関連では792件と、この10ヶ月で昨年の2倍へと急増し、内閣府が2月15日に発表した2年暦年の実質GDP成長率はマイナス4.8%と、リ-マンショック後の平成21年のマイナス5.7%以来11年振りのマイナス成長となっている。

一方で、財務省が発表した「2019年度法人企業統計」による利益剰余金は、前年比から2.6%増の475兆161億円と8年連続で過去最高を更新するなど内部留保を積み増しているが、この利益剰余金は少なくとも社員が努力して利益を積み上げ、毎年度ごとに蓄えきたことは紛れもない事実である。

【国民生活の現状】

1月に総務省が発表した12月の労働力調査では、2020年平均完全失業率は前年比0.4ポイント上昇の2.8%、完全失業者数は29万人増の191万人にのぼり、2月7日に発表された「毎月勤労統計調査」でも、12月の実質賃金も前年比1.9%減となり10ヵ月連続で低下し、ボ-ナスなど特別に支払われた給与は5.4%減と、残業の減少で所定外賃金は8.9%減と2020年通年の実質賃金現金給与総額共に2年連続のマイナスとなり、2020年の実質賃金ベ-スで前年比1.2%減と、その減少率は消費税8%増額以来の減少幅であり、国税庁による「民間企業給与実態統計調査」では民間企業で働く人が2019年の1年間で得た給与は正規社員の給与は503万円、非正規社員は175万円と2.8倍の格差へと拡大し、2019年の年収200万円以下のワ-キングプアは1,200万人と以前高い数値となっている。

日本経済の再生には、コロナ禍の中でさらに落ち込んでいる個人消費の拡大がどうしても不可欠であり、経済の再生に向けた企業の社会的な責任が問われおり、企業が空前の儲けを上げているにも関わらず、その儲けを企業内に留めることは内需を縮小させ、長期のデフレ不況を招く最大の要因であることからも、日本経済を持続的な成長軌道へと回復させるため、GDPの6割を支える個人消費を活性化させることが重要な課題である。

【貨物会社の現状】

貨物会社の2019年度決算は、JR発足から4番目となる経常利益71億円を確保し、10期連続の経常黒字を達成した。新型コロナウイルス感染症の中でJR各社の経営状況も2020年度第2四半期決算は大幅な減収減益となり、貨物会社も△19億円の赤字決算となったが貨物鉄道輸送の役割から旅客会社ほどの影響は受けておらず、「中期経営計画2023」は「連結経常利益140億円以上」を目指すとし、昨年末には国からの支援138億円に対して「JR貨物グル-プ長期ビジョン21030」を策定している。

これは2年間新規採用の抑制や期末手当の低額支給、18年に及ぶ「ベア・ゼロ」が大きく影響しており、2年連続のベア、「200円の上積み」は実施されたが社員犠牲を繰り返す下での経営状況である。

この間の若手社員の退職が続く現状を見るならば、「社員が生き生きとやりがいをもって働き続けられる会社」とするため、現在の人事制度をはじめとした労働条件を改善することが求められている。

社員はコロナ禍の感染のリスクに晒される一方、要員不足は解消せず年休の取得も儘ならず休日を買い上げなければ列車の正常な運行が出来ない劣悪な労働条件は放置され続け、相次ぐ自然災害での大幅な減収からの回復も会社自身の「経営体力の強化」も要因の一つだが、コロナ禍でも「指定公共機関」の使命により貨物鉄道輸送の安定輸送を確保するため勤務変更や臨時作業に多くの社員が協力し続け荷主の要望と社会の要請に対して身を削りながら最大限の努力で応えてきた。

【社員の生活実態】

国労の「2020年度賃金と生活実態アンケート調査」では「毎月の赤字額」が平均赤字額は34,890円となり、「赤字の補填比率」は預貯金と期末手当で92.4%、貨物社員の要求額は33,173円である。「現在の生活程度」の項目では「やや不満足」に「不満足」を加えた回答が47.6%となっており、貨物社員の苦しい生活実態を表す結果と言える。
今、21春闘では、「アフタ-コロナ」の日本経済再生のためにも、大企業が積極的に内部留保を労働者の賃上げに還元し、個人消費を改善することが経済の好循環を招き、デフレからの脱却を行うことが最重要課題となっていることから、これまで我慢を強いられ続けてきている社員、それにくわえて家族の労苦に大幅賃上げで応え、名実ともに健康で安心して働き続けられる環境を整えることが貨物会社に求められている使命とも言えるものである。
「労働協約」第1条「協約の目的」をはじめ「企業の発展」と「組合員の生活の維持向上」に関わる議論では「どちらも重要な課題であること」について会社も労働組合も認識は一致しており、そういう意味では、「企業の発展」を裏付ける原動力である社員の生活向上が、この21春闘ではかられることが強く求められている。

組合側の趣旨説明を受け、会社側より

「コロナ禍の中で予断を許さない状況であるが、現場で奮闘され、大雪や地震などで様々な協力に応えてくれている社員に対し感謝している。一方で収入は新型コロナウイルスの影響や大雪などにより厳しい状況であり、1月期の改定計画は経常黒字を計画したが難しい。回答まで真摯に交渉を行っていきたい」とし、第一回目の交渉を終了した。
尚、次回交渉については3月4日(収入動向)を予定している。             

           以  上

国労本部電送№134から掲載

コロナ禍にあっても収入は堅調に推移している。
日々奮闘している社員に還元せよ!

 本部は本日(3月4日)、『2021年度新賃金引き上げに関する申し入れ』(国労闘申6号)に基づく

第2回の団体交渉を開催した

 冒頭、会社から1月分の営業成績並びに3月3日時点での営業日報により収入動向と輸送量動向について説明を受けた。 (添付資料参照 営業成績、営業日報)

【収入動向】

コンテナは、北日本・日本海側を中心とした記録的な寒波に伴う津軽線等の不通及び新型コロナウイルス第3波到来による需要低迷により、全ての品目で計画を下回った。

特に、北海道の農産品・青果物・外食産業向けの食料工業品、樹脂等の需要が低迷する化学工業品・化学薬品が計画を大きく下回った。結果、コンテナ全体では計画比86.2%となった。車扱は、気温の低下に伴い石油が発送増となり、計画比102.6%だった。

コンテナ・車扱の合計では、計画比88.3%となった。

主なやりとり 【収入動向について】

(組合)1月の数字は低迷しており、新型コロナや雪害による運休本数も増加しているが、

   説明では雪害が大きな要因となっているのか。

(会社)その通りであるが、コロナの影響が続いている。

(組合)新型コロナウイルスによる影響では、対前年比で1割の減少と言われていたが、雪害による減少はどの程度となるのか。また、2月は地震の影響はないのか。

(会社)1月に1週間程度運休が発生し、約8億円の減少があり、2月も強風や雪害により約2億円の減収となっている。地震については翌日には運転を再開しており、それほどの影響はなかったとみている。

(組合)運賃改定を行う中で、対前年で85億円減収しているが、経営陣からは仮に運賃改定がなければさらに100億円の減収があったのではないかとの発言もある。これがなければ、経営に大きく影響したとの見方でよいのか。

(会社)運賃改定で助けられたのは間違いなく、大きな収入効果となっている。2年前の秋のタイミングで運賃改定を行っていたことが現状から見れば最良のタイミングであったと考えている。

(組合)過去の会社の施策は「空気を運ぶよりは、安価でも多くの荷物を乗せる」と言われていた中で、輸送量が上がっても収入が追い付かないものであったが、運賃改定で助けられたのは輸送量と収入の乖離が埋まってきたものであると理解すれば、収入と輸送量が逆転しているのではないか。

(会社)運賃については相場観も下がっており、荷を取る努力もしているが、そこまでの影響はでていない。コンテナ・車扱の輸送量及び収入の見方の違いによるものである。

(組合)年度末に向け、営業としての収入増に向けての施策はあるのか。

(会社)厳しい現状は変わらないとみているが、年度末による引っ越しなどについて昨年度はコロナの影響を受け低迷したが、今年度は取り組みを強めたい。また、ダイヤ改正により専用列車の運転もあることから、大きな収入効果であると考えている。

(組合)特積み貨物についてはどうか。

(会社)「eコマ-ス」は安定性もあり拡大傾向であるので顧客を取り込みたい。また、「BtoB」の比率も高くなっているので新たな収入効果としていきたいと考えている。

(組合)すでに3月に入っているが、年度末に向け営業としても最大限の努力を要請しておく。

(会社)引き続き収入増に向け努力することに変わりはない。

【第2回交渉経過】

(組合)営業から、現時点における収入動向について説明を受けたが、コロナの影響により、厳しい状況であるのは事実であるが、本州三社をはじめとした旅客会社が被っている未曾有の減収と、貨物会社とでは状況は異なっている。コロナにより1割減収が続いているとしているが、現時点で会社はどのように考えているのか。

(会社)1月改定で下方修正し、運賃改定も含めた計画であるが、現時点では計画に届いていないのが現状である。コロナ禍による緊急事態宣言が発せられている中で、年度末に向け、収入確保に取り組んでいかなければならない。

(組合)当初、3月までには回復すると見込んでいたが、回復できない原因をどう分析しているか。

(会社)コロナの状況が第3波に及んだことと、雪害による運休が影響していると考えている。

(組合)貨物会社は10期連続で黒字を確保しており、その中で貨物社員は「指定公共機関」として責務を全うしてきた。

(会社)主張としては、経営陣も理解しているが、経営状況もあり見極めて判断したいと考えている。

(組合)1月改定において、黒字を諦めないとしていたが、考え方については変わりないか。

(会社)雪害等で10億円ほど減収であるが、黒字については諦めておらず、黒字の達成に努力していきたい。

(組合)減収については、コロナによる影響と雪害によるものであり、原因は明らかとなっている。過去に社長は、貨物社員の労働条件は、JR各社最低であると発言している。この間、経営課題を前面に社員の切実な声は放置されてきており、今こそ社員の労苦に応えるべきである。

(会社)主張については、理解した。経営陣に伝えていく。

(組合)エッセンシャルワーカーという言葉がある。それは、人々の生活にとって必要不可欠な労働者とういことであるが、①コロナによる差別、②コロナ感染リスク、③労働時間や休日といった「待遇面」、給与や賞与といった「賃金面」がまったく改善されていないことが問題となっている。貨物会社においても、コロナ禍において責務を全うしている社員に対し、要求に応えるべきである。

(会社)エッセンシャルワーカーについては理解しており、主張については経営陣に伝える。

(組合)この間の利益剰余金の積み増しによって、内部留保を拡大しているが、内部留保を取り崩してでも社員に還元すべきではないか。

(会社)内部留保の定義は様々あるが、平成20年の会計基準の変更により、賞与等に充てることが難しくなっている。

(組合)2021年度の計画は、2019年度並みと考えているようだが過去4番目を上回るものである。JR発足34年の経営を見れば、数回であるが1万円ほどのベアを実施してきた経緯があり、災害を理由とした回答は認められないということを強く指摘しておく。

「次回交渉は3月11日を予定している。」

以 上

営業成績

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【第3回2021年賃金交渉】

 会社⇒「昇給は実施するがベアを実施できる状況にない」 と示唆!!

本部は、本日(3月11日)『2021年4月1日以降の賃金引上げに関する申し入れ』(国労闘申第6号)に基づく第3回の交渉を行った。

冒頭、会社から現時点の考え方を明らかにした。

【会社としての現時点での考え方】

 年度は、「JR貨物グループ中期経営計画2023」のもと、コーポレート・ガバナンスと安全を基盤に、時代に即した新しいサービスによるお客様への最適なソリューションの提供を通じ、「鉄道輸送を基軸とした総合物流企業グループ」への進化を目指し、諸施策を推進してきた。経営基盤の強化として新技術・新規事業へ積極的にチャレンジし、「社員のやりがい」につながる新人事制度の定着を図り、より働きやすい職場づくりを目指してきたが、今年度は、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行拡大により、社会経済活動が大きく制限され、度重なる自然災害の中で鉄道事業は、大幅な減収を余儀なくされ、自然災害に伴う輸送障害は、社員の協力のもと代替輸送等により、収入の確保に努めた、昨日時点、1月期計画に対して取扱収入が△約15億円と厳しい状況である。

 以上、様々な状況を総合的に考え、今回については「昇給額表に記載している、等級及び評価に応じた昇給は実施するものの、現時点、ベースアップについては実施できる状況にない」との考え方を示した。

(組合)諸元について説明を求める。

(会社)2021年4月1日現在(推計)          

    社員数 5,481人  (昨年比+68人)        

平均年齢 37.7歳  (昨年比-0.7歳)       

平均勤続年齢 17.0年  (昨年比-0.7年)       

基本給 260,448円(昨年比-3,180円)28,104円(昨年比+1,700円)

昇給額 4,408円(+1.74%)  (昨年比+133円)        

※100円の原資は約900万円。

(組合)諸元については承知した。何点か確認するが、基本給については何処までの範囲を指しているのか。都市手当と職務手当を合計して表示してあるが、何故分けて書かないのか。昇給額についてはA評価でのものとの理解でよいか。ベア原資についてはいくらとなっているのか。

(会社)範囲については一般職であり助役を含めた社員である。都市手当と職務手当は制度変更に伴い、支給の範囲が変わったが、同じ基準内賃金であることから合計で算出してある。昇給額については指摘の通りA評価で算出した。ベア原資については100円の原資は約900万円弱であり、一般社員とシニア、契約、臨時社員を合計したものである。

(組合)減収の原因はコロナ禍による経済全体の低迷が影響していることは明らかであり、JR他社や、物流業界全体の状況に貨物会社が影響されることは許されるものではなく、貨物会社自体の判断が求められているのではないか。コロナ禍の中奮闘する社員に向け、現時点の考え方が真に社員の現状に応える内容であるとは言えず、減収を社員犠牲に転嫁しているだけだと指摘しなければならない。

(会社)現時点の考え方は前回までの貴組合との交渉内容を含め、社内議論を経てのものであり、同業他社等の状況を見ていることは事実であるが、そのことと、貨物会社の考え方とがリンクすることはない。

(組合)事業計画数値は過去の最高益に匹敵する数字を計画し、設備投資に至っては400億円に迫る、減価償却費の倍となる過去最高額を計画するとしていることからも、企業体力がついてきていると見ることができ、中期計画でも5年間で2,080億円、10年間で4,000憶円を超える計画となっている。これだけの投資を計画通り行うとしている中、社員には100円のベアも行わないとの説明は理解できず、僅か900万円の賃上げにも背を向けることは、企業としても責任を果たしているとは到底言えず、繰り返すが、減収を社員犠牲で乗り切るやり方であると指摘しなければならない。今日現在、黒字を諦めたということか。

(会社)この間の社員の協力には感謝しており、蔑ろにする考えは毛頭ない。厳しい現状には変わりはないが、黒字を諦めてはいない。

(組合)黒字を諦めていない下で、膨大な設備投資は計画通りに続けるということは、経営の方針は変えないとしているものであり、その中でコロナ禍でも奮闘する社員の要求に応えないとしている考え方には呆れるばかりであり、社員と家族の切実な実態を顧みないものでしかない。

(会社)あくまでも現時点の考え方であり、本日の交渉を持ち帰り最終場面まで社内議論を行っていくことに変わりはない。

(組合)持ち帰り社内議論する中で、考え方が変われば再度交渉するということでよいか。

(会社)今後の社内議論で、考え方が変われば説明していかなければならないと考えている。

(組合)縷々議論したが、自然災害を理由にその減収を社員犠牲に転嫁することは認められない。10期連続の黒字の中、今年度も黒字を諦めていないとの認識を示し、過去にない設備投資を今後10年間も続ける下で、社員には僅か900万円も投資するつもりはないとする会社姿勢は認めるわけにはいかない。売上高人件費比率は25%台まで減少させ、社員犠牲を続けてきているのが貨物会社の34年の経営ではないか。このことからも今日の現時点での「ベアを実施できる状況にない」とする会社の考え方は到底受け入れるわけにはいかない。よって、撤回し再考を求める。

(会社)貴組合の主張は承知したが現時点の考え方は説明のとおりである。最終場面に向け本日の議論も含め社内議論を進めていくことに変わりはない。

 貨物会社は、本日の21春闘第3回交渉の中で、「定期昇給は実施するが現時点ベアを実施する状況にない」との考え方を明らかにした。11期連続の黒字を目指していると繰り返し主張する下で、設備投資は過去最高額の投資を今後も続けるとしているが、ベアは実施する状況にないとの考え方は到底受け入れることはできないと厳しく抗議し再考を求めた。

 よって、本部闘指示第30号を発しているので、緊急行動を最大限取り組むこととする。

以 上

貨物会社「ベア・ゼロ」を回答!

コロナによる減収を社員に転嫁!

本日(3月18日 21時50分)、貨物会社は「2021年4月1日以降の賃金引き上げに関する申し入れ」(国労闘申第6号)に対し、「ベア・ゼロ」回答を行った。 

 会社は、「今年度は、「JR貨物グループ中期経営計画2023」のもと、「鉄道輸送を基軸とした総合物流企業グループ」への進化を目指し、諸施策を推進してきた。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行拡大により、社会経済活動が大きく制限され、また、度重なる自然災害の中、鉄道事業においては、大幅な減収を余儀なくされ、自然災害に伴う輸送障害では、社員の協力のもと代替輸送等により、収入の確保に努めたが厳しい状況となっている。」とした上で、こうした様々な状況を総合的に考え、今年度については「昇給額表に記載している、等級及び評価に応じた昇給は実施するものの、ベースアップについては実施できる状況にない」と「ベア・ゼロ」の回答を行った。

これに対し本部は、

①.今回の「ベア・ゼロ」回答は2年連続のベアの実施や昨年の賃金改善措置を台無しにするだけではなく、自然災害やコロナ禍による減収を社員に転嫁したものでしかない。

②.この間の2年連続鉄道事業部門の黒字化達成やJR発足以来最高の経常利益を上げてきた経営状況、また、来年度事業計画は最高益に匹敵する計画の下で、社員と家族の厳しい生活実態を顧みないものでしかない。

③.コロナ禍の下、昼夜を問わず懸命に働く社員に正当に還元しない姿勢は、日々安全輸送を最前線で支える社員感情を逆撫でするものであり、若年退職が今なお続く今日の状況から、経営責任を果たしているとは到底思えない-と強く抗議した。

これに対して会社は、「貴側からの抗議については受け止めるが、本日の回答は最終回答である」と重ねて表明した。

最後に本部は、「東日本大震災から10年が経過したが、その年度から10年にわたり経常利益を確保し、内部留保を積み増ししてきた」とした上で、「減収の要因は明確であり、社員に更なる犠牲を転嫁し乗り切る経営姿勢は絶対に認められない」と改めて抗議し、本日の回答の取り扱いについては「持ち帰り」とし交渉を終了した。

本日の貨物会社の「ベア・ゼロ」回答に対して、別途、発せられる闘争指示に基づき、抗議行動の展開を要請する。

 なお、オープンは22時45分であり、取り扱いは注意すること。

以 上


国労本部闘争指示第36号


【2021年3月25日
貨物「2021年度新賃金回答」の妥結にあたって】


(1)貨物会社は3月18日、「2021年度新賃金引き上げに関する申し入れ(国労闘申第6
号)に対し、2年連続となる「ベアゼロ」を回答した。
席上本部は、①.今回の「ベアゼロ」回答は、2年連続のベアの実施や昨年の賃金
改善措置を無にするだけではなく、自然災害やコロナ禍による減収を社員に転嫁した
ものでしかない。②.この間の2年連続鉄道事業部門の黒字化達成や、JR発足以来
最高の経常利益を上げてきた経営状況、また、来年度事業計画は最高益に匹敵する計
画の下で、社員と家族の厳しい生活実態を顧みないものでしかない。③.コロナ禍の
下、昼夜を問わず懸命に働く社員に正当に還元しない姿勢は、日々安全輸送を最前線
で支える社員感情を逆撫でするものであり、若年退職が今なお続く今日の状況から経
営責任を果たしているとは到底思えない。-と、「ベアゼロ」回答に対し強く抗議の
意思を表明してきた。
本部は直ちに闘争指示第33号を発し、貨物会社の「ベアゼロ」回答に対して、本日
まで抗議行動を展開してきた。
(2)2021年春闘は、2月12日の統一申し入れ以降、コロナウイルス感染症の第3波におけ
る緊急事態宣言の下、JR各社は社会経済活動が大きく制限されたことにより通期の見
通しを示せない中で、要求趣旨説明から4回の交渉を開催し、国労要求実現に向けて
全力をあげてきた。趣旨説明では、「この間企業が貯めこんだ利益を労働者へ還元す
ることで、大幅賃上げを実現するべきであり、個人消費を活性化させることが日本経
済には重要である。労働時間の短縮や社会保障の充実をはかる中で、賃上げを行うこ
とが今春闘に求められており、賃上げにより個人消費を伸ばすことで『経済の好循
環』へ繋がり、貨物会社経営にも好影響を与えることは間違いない」と主張してき
た。
(3)JR発足34年が経過する中で、構造矛盾の根底にある経営基盤の脆弱性や、賃金ア
ンケート結果に基づく要求の正当性、貨物会社の支払い能力などを明らかにする宣伝
と要請行動を展開してきた。
3月3日に開催された国労中央総行動は、新型コロナウイルス感染症の影響によりリ
モートを活用し規模も縮小せざるを得なかったが、各政党への要請行動では、コロナ
禍や大規模災害などからJRの鉄道ネットワークと労働者を守る課題について要請し、
この間繰り返し主張してきた「構造矛盾の解決なくして鉄道貨物輸送の発展はない」
ことを改めて認識するとともに、国労が幾度にわたって提起してきた「鉄道政策提
言」が益々重要であることに確信を持つ要請行動となった。
(4)3月11日に行われた第3回交渉で貨物会社は、今年度は「新型コロナウイルス感染症
の世界的な流行拡大により、社会経済活動が大きく制限され、度重なる自然災害の中
で鉄道事業は大幅な減収を余儀なくされ、自然災害に伴う輸送障害は社員の協力のも
と、代替輸送等により収入確保に努めたが、1月期計画に対して15億円減収である」
として、「昇給額表に記載している等級及び評価に応じた昇給は実施するものの、現
時点、ベースアップについては実施できる状況にない」という会社の考え方を明らか
にした。
この主張に対し、「減収の原因はコロナ禍による経済全体の低迷が影響しているこ
とは明らかであり、加えて自然災害を理由に、10期連続の経常黒字の中、減収を社員
へ責任転嫁する考え方は経営の責任放棄であり、到底受け入れることはできない。ベ
ア100円の原資、僅か900万円の賃上げにも背を向けることは企業として責任を果たし
ているとは言えない」として、各級機関から貨物本社に対し本部闘争指示第30号を発
し、「ベアゼロは許さない」決意を込めた要請行動を指示した。
(5)今春闘では、「春闘カベ新聞」8号を発行し、現場長申し入れや宣伝行動の展開、中
央での交渉に結合した本社・支社・支店への要請行動等、要求前進に向けた行動が取
り組まれてきた。国労要求を目指した個人署名は他労組組合員を含む1,137筆を集約
した。これは、この間2年連続で有額回答が行われ、昨年は賃金改善措置が実施され
たが、今春闘での貨物会社の姿勢に対する不満から要求実現に期待する表われであ
り、総対話活動や職場の運動と交渉が結び付いた成果として確信を持ちたい。
貨物会社の姿勢は、経営課題を前面に、その時々の状況を理由としており、社員の
生活実態は未来永劫改善しないと言っているの同じである。その上で、要求の前進の
ためには組織の強化・拡大が最も重要であることを訴え、今後も取り組みを一層強化
していかなくてはならない。
本部は本日(3月25日)、2021年春闘における闘いの成果と課題を明らかにした上
で、「2021年度新賃金回答」について妥結することとした。
要求獲得に向けた全国の職場からの奮闘、創意工夫した取り組みに改めて感謝しつ
つ、引き続き諸要求の前進に向けて奮闘することを約束し、妥結にあたっての本部見
解とする。
以 上