国鉄労働組合東日本本部 業務連絡報2022年3月18日 第1643号より掲載

 国労東日本本部は、昨日、JR東日本より示された「2022年度賃金改善」回答について、持ち帰り検討していましたが、取扱いについて本部・執行委員会にて協議を行ったうえで、本日12時に妥結・整理を図ることにしました。

以下、妥結・整理にあたって国労東日本本部の見解とします。

(1)一昨年来のコロナ感染拡大による繰り返される緊急事態宣言等の発令により、社会活動が制限され、多くの企業が存続の危機という状況となる中で、JR東日本も鉄道利用者が激減し、2020年度の決算は、JR発足以降、初めてとなる赤字を計上しました。会社は、2年連続の赤字は何としても避けなければならないとし、収益の確保や経費削減を進めてきました。しかし、2021年度、第2四半期決算では、黒字予測から一転して1,600億円の赤字計上になる下方修正を行い、2022年1月31日に発表された第3四半期決算では、2期連続で営業損失・経常損失・四半期純損失となる中で新賃金交渉を迎えることとなりました。

(2)交渉におけるJR東日本の基本スタンスは、「安全安定輸送や品質の高いサービスを提供し、当社の社会的使命を果たしていることにお礼を申し上げる。また、職場の中で様々なアイディアを出しながら様々な課題に取り組んでいること」と感謝の意を表しつつ、同時に「ポストコロナ時代に向けて『変革2027』のレベルとスピードを上げ、さらなる収益力の向上及び構造改革、系統を超えた取り組みをさらに推進していくことが必要であり、これらを念頭におき支給水準については極めて慎重に判断しなければならないという認識のもと、総合的に判断していく必要がある」という厳しい現状認識を示してきました。

(3)国労は、「赤字幅は縮小していて、昨年のような状況ではない」、「様々な施策が行われる中で、社員は赤字削減にむけ努力してきている」、「将来を見通せない中で若手の離職が出てきている。そういう状況に拍車をかける状況を作るべきではない」、「人材確保には、良い労働条件が必要。賃金はその最たるものであり、人件費を削減する企業では良い人材は確保できない」、「利用状況も回復基調であり、赤字を強調するだけでなく、希望を与える事も示すべきである」、「アンケートでは、96%が賃金に不満と答えている。さらに削減ではモチベーションを保つことは出来ない」、「投資できる金があるなら人にも投資出来るはずではないか」など、コロナ禍の中でも「安全・安定」輸送に寄与してきた社員の努力に応えることこそ社員に対する感謝であり、国労の要求に形で応えることを強く訴えてきました。

(4)こうした主張に会社は、「コロナ禍の中でも努力する社員に感謝する」ことを何度も示しつつも、「業績見合いなら0という企業がある中で、当社は業績見合いだけでなく、様々な状況を見て総合的に判断していく」という考え方を示し、「今の状況が良いとは思っていない」と述べてきました。

  回答では、再度感謝の意を示しましたが、「赤字は変わらないという状況から総合的に判断し、今示せる最大限の内容である」として、「定期昇給を実施し、その際の昇給係数については4とする」(令和4年4月1日現在、満55歳未満の社員)内容を示してきました。

(5)席上、国労として、「今回答は、この間の交渉の中で、会社が、『赤字であれば0が普通であるが、様々な状況を勘案し、総合的に判断する』としていたことや『今の状況が良いとは思っていない』『あってはならない』という考え方を示していたことからの判断と受け止める。しかし、55歳以上の処遇改善やエルダー社員の処遇改善、そして何よりも昨年削減された昇給係数2の回復が図られなかったことに不満はあることを表明し、繰り返し改善を求めました。

会社は、「今出せる最大限の回答である」ことを表明し、エルダー社員の処遇改善や65歳定年、昇給係数の回復、第2基本給の問題など引き続き議論を行っていくことを確認し、「持ち帰り検討」としました。

(6)JR東日本との賃金交渉については、今後、執行委員会にて総括を深めますが、労使の関係で言えば12組合(約1万4千名)が乱立している状況下での「力」の分散と、未加入者が8割を占める中でどう社員の声を伝え要求を勝ち取るかということが課題となっていました。

  加えて、失われた労働組合への信頼獲得に向け、労働組合だから出来る取り組みの宣伝・理解や、組合未加入者の不安・不満な気持ち・声の代弁者としての交渉強化の問題、そして何と言っても、私たちの最大の課題である、組織拡大に向けた取り組みに結び付ける取り組みが図られたのか等、様々な角度からの分析と総括が必要です。

(7)国労東日本本部としては、ダイジェスト版の発行体制の強化から迅速な情報発信に努め、昨年に続き、賃金アンケートの取り組み、他労組にも協力要請をしてきました。また、各地方においてもコロナ下の中でも創意工夫した職場からの春闘を構築し、私たちの最大の課題である、組織拡大に向けた取り組みに結び付けていくことを提起してきました。それらの取り組みが、「業績見合いだけなら0という企業もあるが、様々な観点から総合的に判断したい」「今の状況が良いとは思っていない」と会社の認識を不十分ながらも変化させてきたということも言えます。

(8)こうした状況に鑑み、①「昇給係数4」については要求に沿った内容であり評価できること、②回答指定日に回答されたことなども到達点ととらえ、社員の生活設計など考慮し妥結・整理することとしました。

  国労東日本本部に寄せられた激励により、逆風下の本社・本部間交渉を現場から支えて頂いたことに感謝を申し上げます。

JR東日本との賃金改善交渉は整理をみますが、新型コロナウイルスの第6波が続く中で、感染防止対策はもとより、各施策の検証などを通じ、社員が安全に安心して働ける労働環境・労働条件改善を会社に求めて行きます。

また、JRグループではこれから賃金交渉の山場を迎える会社も多くあり、引き続き、賃金改善の取り組みに向け奮闘する決意です。

                               以 上