21春闘・JR東日本との新賃金交渉、第一回・第二回


【第1回新賃金交渉、組合から趣旨説明を行う】

以下は、ダイジェスト

作成:国労東日本本部


【第2回新賃金交渉】

東日本本部は3月11日、「2021年4月1日以降の賃金改善等についての申し入れ」(国労東日本申第12号、2021年2月12日付)第2回交渉に臨みました。

 交渉は、冒頭会社側より資料に基づく現状認識の説明から再開しました。会社からの説明と主なやり取りは以下の通りです。

【資料①】実質GDP成長率の推移(対前年度比)

【資料②】景気動向指数(CI)(H27=100)・景気ウォッチャー調査

【資料③】外国為替相場・日経平均株価

【資料④】原油価格(WTI)・金利動向(長期国債)

【資料⑤】消費者物価指数(H27=100)

【資料⑥】損益の推移

【資料⑦】完全失業率と有効求人倍率・公共工事設計労務単価

【資料⑧】生産年齢人口の推移・都道府県別人口増減率

(平成21年~26年、平成26年~R1年)

*会社資料は別紙参照

第2回新賃金交渉・ダイジェスト

[会社の現状認識]

<日本経済の状況>

・2月の月例経済報告によれば、景気の基調判断は「新型コロナウイルス感染症の影響により、依然として厳しい状況にあるなか、持ち直しの動きが続いているものの、一部に弱さがみられる」と10カ月ぶりに下方修正し、国内の先行きについても、「緊急事態宣言解除後も感染拡大の防止策を講じつつ、社会経済活動のレベルを引き上げていくなかで、各種政策の効果や海外経済の改善もあって、持ち直していくことが期待される」としたものの、「内外の感染拡大による下振れリスクの高まりに十分注意する必要がある」と懸念を示した。また、海外の先行きについても、「持ち直しの動きがみられる」としつつも、「感染の再拡大が経済活動に与える影響によっては、景気が下振れするリスクがある」としている。また、金融資本市場に与える影響に留意する必要があるとしている。

<損益の推移>

・令和2年度の第3四半期決算については、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて営業収入は対前年で半減し、第3四半期としては過去最低の数値となった。一方、費用については、人件費や物件費の減となったが、営業利益が△2,878億円となり、第3四半期として初めて営業損失を計上した。

通期についても、12月からの感染再拡大、1月の緊急事態宣言の再発出で、昨年9月の業績予想の下方修正を行っている。

2月の収支状況では、定期収入は対前年で70%と回復傾向であるが、定期外収入は45%まで減少している。鉄道営業収入全体では50%の落ち込みをしている。引き続き、非常に厳しい経営環境になるが、感染症対策など安全を期しながら、早期の業績回復に努めると共に、お客さまに安心してご利用いただくために信頼を確保していく必要がある。

<基本スタンス>

・新賃金の議論にあたっては、新型コロナウイルス感染症の影響により、人の行動や価値観が変容し人の移動を伴わない働き方や暮らし方等、経営環境は急激に変化をしている。このような状況の中で、感染症対策に万全を期しつつ、早期の業績回復に努めると共に、「変革2027」の実現に向けた取り組みとレベルのスピードを上げてサスティナブルな社会発展に貢献する企業をめざしていかなければならない。その為には、社員一人ひとりが主人公となり、変化を先取りした価値とサービルを提供していくことが不可欠である。

当社の収益状況が大幅に悪化し、ポストコロナにおいても以前のご利用水準までの回復は見通せない状況にある。このように大変厳しい経営見通しの現状を乗り越えたうえで、その先の持続的な成長につなげていくべく、全社員が一丸となって今後さらに生産性の向上に資する抜本的な構造改革に取り組むとともに、ポストコロナ社会を見据え、変革のスピードアップを推し進めていかなければならない。

そのような中での令和3年度の新賃金については、足元の状況を踏まえつつ、極めて慎重に判断しなければならない認識である。

 以上のような基本スタンスを踏まえ、新賃金やそれ以外の要求についても、総合的に勘案し判断する必要があると考えている。今後、早期合意を念頭に、スケジュール感を持ちつつ真摯かつ精力的に議論を進めていきたいと考えている。

<組合側>

・3月2日財務省が発表した2020年10月~12月期の法人企業統計調査では、内部留保を積み上げている。JR東日本も例外ではなく、発足以降積み増してきた内部留保の活用と、短期借入金や社債などの発行で、1兆2,275億円も調達し、48%の5,827億円を使用している中でも1,810億円の現金預金がある。コロナ禍で奮闘している社員やエルダー社員を元気づけるためにも会社の英断を求めたい。

<会社側>

・内部留保、当社で言う利益剰余金については、今回のコロナウイルスの影響や今後の様々なリスク、また、今後会社が持続的な成長をするための必要な投資等に活用していく。新賃金については、中長期的に影響があり業績等を踏まえて判断をする。現段階においては、利益剰余金を取り崩して新賃金に配分することはない。

<組合側>

・3月1日に2022年度の採用計画700名程度との発表があった。これまでの10年間は約1,800名程度で推移し、次年度はコロナウイルスの影響で、約1,300名に抑制、または、設備投資についても安全に支障が無い範囲で先送りするコスト削減を明らかにしている。会社は、技術革新を進めていくとしているが、今の職場の状況を見た時に技術断層とモチベーションの低下が懸念される。こうした事に対する今後のシミュレーションはどの様に考えているのか。また、30歳以下社員の離職数は、残念ながら増えている。離職を防ぐ対策、退職まで働き続けられる魅力、例えば福利厚生等の充実も重要であり、この辺の考え方はどうなのか。

<会社側>

・採用数の減、業績の悪化は1つの要素である。ただ、採用について、この間、1,800名程度を採用してきたが、元々は空白の10年を埋めるという事で採用をしてきた。国鉄世代の退職も見えてきたことと、仕事のシステム化や機械化による効率化、営業であれば業務委託等を確実に進めることを踏まえつつ、採用計画をしている。コロナが落ち着いたら戻すわけではなく、元々の計画である。今後は、生産年齢人口も減少し、採用についても厳しい状況になるが、引き続き、優秀な社員の獲得に努力をしていく。離職率も他企業に比較すれば少ない数値であるが、上昇傾向であり、会社としても、福利厚生や働きがい、仕事のやりがい、魅力付けのために引き続き努力したい。

<組合側>

・1都3県に緊急事態宣言が延長されると共に、ここにきて「変異株」も拡大されている。感染者の下げ止まりの中で、再々延長も報道されている。JR東日本も感染防止対策の指示を節々で示しているが、政府の指針に留まっている。お客さまと接する駅や乗務員は不安感を持ち業務をしている中で不安解消は大事であり、会社としてどの様に対応するのか。

<会社側>

・公共性の高い会社であり、政府の指針を上回るのは難しいが、感染防止対策では出来る部分は行ってきている。危機管理の観点からも、引き続き行っていく。

<組合側>

・労働分配率の関係では2013年以降減少し、2019年度は社員数の減少などで若干上昇したが、下がり続けている。さらに、ベアが実施された7年間でも年収は1.02倍しか伸びておらず、賃上げの実感が伴っていない。会社は「コロナ禍や地震復旧で社員の労苦に感謝する」としつつも、「社員への還元」だけは低迷している実態である。

<会社側>

・社員への還元については、昨年までの7年連続のベアは事実であるが、それ以外の部分も含めて行い、福利厚生を含めての見直しや、通勤手当の改正、現業機関へのフレックスタイムの拡大等、総体的に見て判断をしていただきたい。

 今後も、会社として出来るところは行っていきたい。また、今年度の新賃金については、新型コロナウイルスの影響で厳しい状況でもあり検討しながら判断をしていきたい。

<組合側>

・株主とお客さま・社員への投資に関して、会社は株主還元の方針の下で、総還元性向と配当性向共に引き上げている。同時に、業績を踏まえ自社株買いも実行してきた。JR東日本の大株主は金融機関と外国法人であり、大企業と海外企業が儲けている実態である。利益は、安全とサービスへの還元、併せて、そこに働く社員・グループ会社社員と家族の幸福の実現が伴わなければいけない。

 「コロナで赤字」と言いつつも「羽田空港アクセス線」などでの巨額な投資を行っていることを見た時に、会社の体力を実感している。 

 今年の現状判断では「極めて慎重」と一歩踏み込んでいるが、こうした時だからこそ、「第二基本給の加算凍結」を含めて様々検討することも必要であり、国労要求に真摯に応えることを求める。

<会社側>

・しっかりとした還元については、しっかりと勉強を行い時間帯別のサービスを明らかにしているが、引き続き検討していく。社員についても、厳しい中でも検討し出来る事はお示しをしていきたい。「アクセス線」は、コロナ禍の状況には戻らない中で、企業として黒字に戻すために何ができるかを検討した中での必要な投資である。引き続き、コントロールしながら、収益を上げるための施策として進めていきたい。貴側からも基本給以外で「第二基本給」問題含め様々な要求を頂いているが、退職金にも関わってくることであり、公平性などの観点から慎重に議論したい。また、定年延長も含めて今後は義務化になることも予想される中で、勉強しながら検討していきたい。

<組合側>

・グループ年次計画も発表され、「意欲的な目標を持ち、その達成に向けてチャレンジを続ける」としてる。働き方・働きがいも必要であり、仕事の達成感と共に、賃金等による社員のモチベーションは大切である。厳しい中で、貴重な人材を確保していく観点からも前向きな検討を求める。

<会社側>

・採用活動を進める中、学生・親御さんの一番の懸念は「赤字の会社に入って大丈夫なのか」である。会社としては経営体力はしっかりとあり、今後も成長投資を続けると説明しているが、2年連続となると採用市場における信頼も低下するので、社員も経営側もしかりと取り組んでいかなければいけない。基本給についても、まずは黒字化の観点で慎重に考えていく。

<組合側>

・現在の株価と業績はどの様に考えれば良いのか。

<会社側>

・本来は連動すると考えるが、鉄道は安定感がある企業ではある。経済的な状況が悪くなれば、安定的な所への買いが入っているのかと推測するが、慎重に判断をしないといけない。

<組合側>

・株主配当は出すが、従業員への還元は限りなく慎重な姿勢は、変えるべきである。私たちの労働の本当の価値、コロナ禍での労働は従来以上に高まっている。お客さまの利用が減っても、現場の社員は感染の恐怖の中で働いている。2度目の宣言以降のテレワーク等に入った社員数のデータを会社は把握しているのか。また、グループ会社における非正規社員の雇用状況について聞きたい。

<会社側>

・テレワークについては、政府の要請に基づき行っているが、業務の必要性や必要な感染防止策を各現場に求め、現場長に判断をゆだねているので、あえて把握はしていない。グループ会社を含めた、雇用状況については各社の中での判断である。ただ、JR東日本で言えば、コロナ禍であるが、テンポラリースタッフは必要な人材であり、コロナ感染防止から在宅扱いにし賃金は払っている。

<組合側>

・今回の要求ではテレワークに対する手当要求を求め、また、テレワークが出来ない職場、感染の恐怖におびえ働く社員に対する手当も求めているので、受け止めてほしい。

・JR他社では、一時帰休や会社の指示による休業が行われている。この理由は、国の雇用調整助成金を活用した経費負担補助の一環だと認識をする。JR東日本においても昨年制度を確立し、その交渉で休業指示する1つの例として「コロナの長期化等に備えるため」との会社回答がされた。今後、その辺含めて検討しているのか、考え方をお聞きしたい。

・昨年の新賃金回答にて、「『変革2027』の実現に向けた総合的な処遇改善」として職場環境改善費45億円を計上したが、その達成状況と、今期もそのような事は検討しているのか。

<会社側>

・休業指示については制度としては確立しているが、現在、在宅勤務・テレワーク、自宅待機で行っている部分を一時帰休と見直して、申請をすることは出来ると考える。当然、その為には労使との一致を見ないと出来ない部分もあるが、会社としては、雇用調整助成金を活用した経費負担補助は世間的な声、例えば国の金を活用して人件費に充てているなど等、様々な声が出てくることも事実である。会社としては、一時帰休を実施するまでには至っていないとの判断である。

・グループ会社を含めた環境改善に45億円を計上したが、現段階においてどこまで達成したかは確認していない。懸念としてあるのは、コロナ禍の中で作業が止まっている部分もあるかと思うが、しっかりと確認したい。職場環境については、引き続き行っていきたい。

<組合側>

・駅受託をしているグループ会社では、女性設備の不備について報告を受けている。設備改善はJRの責任であるので、スピード感を求める。本日は2回目の交渉で、会社の現状認識を踏まえて、様々な切り口で議論をした。先ほど会社からも、アフターコロナを切り開く力として「変革の主役は社員一人ひとり」という表現で社員に積極的なチャレンジを呼びかけた。最近、冨田会長はある新聞の取材に対して、「新状態でのサービスをつくるには、ボトムアップによる社員の創意工夫は欠かせない」として、「トップダウンとボトムアップの融合を目指す」とし、社員の一層の奮起を期待してる。

 なればこそ、この難局を乗りきるためにも、現場第一線社員のモチベーションをいかに向上させるか「労苦」に応えるかは重要である。今後、経営判断を迎えることになるが、国労要求に踏まえて検討することを求めて、本日の交渉を終了したい。

<会社側>

・本日の交渉はここまでとし、次回以降は窓口間にて調整をしたい。

<以 上>