国労本部電送№156より掲載

発信日 2022年2月24日

〈貨物会社団体交渉〉

22春闘 第1回交渉「2022年度新賃金引き上げに関する申し入れ」で趣旨説明を行う。

本部は本日(2月24日)、『2022年4月1日以降の賃金引上げに関する申し入れ』(国労闘申第7号)に基づく団体交渉を行い、①.新自由主義がもたらした貧困と格差の現状。②.新型コロナウイルス感染に伴う国民生活の現状と賃金引上げの重要性。③.貨物会社の現状並びに労働者と家族の生活実態。-などを中心に以下の趣旨説明を行った。

『はじめに』

昨年10月に第100代内閣総理大臣に就任した岸田首相は、競争原理を重視する新自由主義の下、公平な分配が行われずに格差拡大を招いたとして、「成長と分配の好循環」を通じた分厚い中間層の復活を目指し、「分配と格差の問題にも正面から向き合い、次の成長につなげ、成長と分配の両面から経済を動かし、好循環を生み出し、持続可能な経済をつくる。」と衆参両院の本会議で施政方針演説に臨み、経済再生の要は「新しい資本主義」の実現にあると訴えた。

企業は利益を賃上げや設備投資に回さず、内部留保を20年度末には484兆円にまで積み上げている。一方で、経済協力開発機構(OECD)によると、20年の日本の平均賃金は購買力平価ベースで約440万円と30年前から4%しか上がっておらず、主要7か国の内、最下位となっている。

『労働者の現状』

2019年末から世界的に蔓延しているコロナによる影響により、大規模な企業倒産と失業を誘発し、日本における経済活動の停滞は企業倒産全国で2854件、業績悪化を理由とした解雇や雇止めが、11万326人となっており、労働条件の引き下げなど労働者へのしわ寄せが顕著に表れている。

2021年7月から9月期実質GDPに比べ、10月から12月期の実質GDPは年率換算で5.4%増え、実額で、実質GDPは年換算で541兆円であり、消費税率10%増税となった19年7月から9月期の558兆円から後退したままとなっている。GDPの5割以上を占める個人消費は消費税10%増税前の300兆円台を下回っている。

経済が成長せず危機に弱い根本には、一人当たりの実質賃金がピーク時の1997年と2020年を比べると64万円も減少しており、賃金が上がらない日本の異常さが浮き彫りとなっている。

個人消費を支える大きな柱は、労働者の賃金であることからも、大幅な賃上げを実現することが景気回復の出発点であり、個人消費が伸びれば新たな設備を生み出し「経済の好循環」へ繋がっていくことは明らかであり、このことが貨物会社の経営にも好影響を与えることは間違いない。

『貨物会社の現状』

新型コロナウイルス感染拡大の影響によるJR各社の経営状況は、大幅な減収となり各社赤字決算となったが、貨物会社においては、物流を取り巻く環境は旅客会社における未曾有の減収とは状況が異なり、巣ごもり需要を背景に、2020年度決算は、単体、連結ともに黒字となり、11年連続で経常黒字を確保している。

長引くコロナによる影響は、荷動きの減少や部品不足等により、1月改定で「2021年事業計画」の下方修正を余儀なくされているが、単体5億円、連結19億円の黒字を目指すものとしており、十分に社員の期待に応えることができる体力はある事が示されている。

貨物会社は国民生活を担っていることからも、緊急事態となっても事業継続が求められている中で、社員は新型コロナウイルス感染症の脅威と隣り合わせでありながら、「指定公共機関」と位置付けられた責任を背負い、昼夜を問わず業務を遂行していることが、貨物会社が求められている役割を果たせている。貨物会社の構造矛盾や計画を達成させるために、長期にわたり社員に我慢を押し付けてきたことが、社員が疲弊し、事象や労働災害につながっている。「利益を上げても還元しない」という貨物会社の姿勢は、社員がモチベーションを保つことは厳しく、疲労だけが重くのしかかっている。2022年春闘において、社員が安全に安心して働くことのできる環境、また、厳しい生活を強いられている実態を改善させることが貨物会社の責任となっている。

JR以降の採用者が社員の8割以上を占める中で、安全輸送と安全作業の確立には、適切な要員配置と安全な作業環境の整備、社員のモチベーションの向上が絶対条件であり、賃金をはじめとした労働条件の改善において、今春闘で大幅な賃上げを実現し、社員と家族の期待に応え、安心とゆとりをもたらすことが、安全を基本とした鉄道貨物輸送の持続可能な発展に繋がることである。

『賃金アンケート』

国鉄労働組合が実施した「2021年度賃金・生活実態アンケート調査」では、63.5%の社員が「毎月の赤字がある」と回答し、赤字額は35,357円であり、その補填には47.6%が「預・貯金の切り崩し」で、45.8%が「期末手当から充当している」と補填せずにはいられない現状となっている。生活程度については、「何とも言えない」が36.2%と一番回答が多く、「満足」と「やや満足」の合計は12.1%となっている。一方で、「やや不満足」が29.1%、「不満足」が22.6%で、合計51.7%であり、「何とも言えない」の36.2%を加えれば実に、87.9%の方が今の生活に満足していない結果となっている。

2022年春闘では、日本経済を再生させるには、多くの労働組合が「ベア」を要求する中で、先進国最低となった賃金を引き上げる決断を行い、大きく落ち込んだ個人消費を改善させることが、経済の好循環を招き、デフレからの脱却を行うことが、経済の再生に向けた企業の社会的な責任が問われている。

「労働協約」第1条協約の「目的」では「企業の発展」と「組合員の生活の維持向上」について「どちらも重要な課題である」と認識を一致させてきた。このことからも、「企業の発展」を裏付ける原動力こそ「社員の生活の維持・向上」であり、22春闘で改善が図られることが強く求められている。

組合側の趣旨説明を受け、会社側より、「3月17日までに回答できるよう、真摯に団体交渉に臨んでいく」とし、第一回目の交渉を終了した。尚、次回交渉については3月3日(収入動向)を予定している。            

以  上