国労本部電送№166より掲載
2022年3月9日

<貨物会社>第3回2022年賃金交渉速報

会社の現時点の考え方「ベアを実施する判断に至っていない」にとどまる。 

本部は、本日(3月9日)『2022年4月1日以降の賃金引上げに関する申し入れ』(国労闘申第7号)に基づく第3回の交渉を行った。

冒頭、会社から現時点の考え方を明らかにした。

【会社としての現時点での考え方】

 今年度は、「JR貨物グループ長期ビジョン2030」で掲げた、持続可能な社会の実現に向け、社会に提供する「物流生産性の向上」、「安全・安心な物流サービス」、「グリーン社会の実現」、「地域の活性化」の4つの価値を生み出すため、「JR貨物グループ中期経営計画2023」のもと、利益拡大等の諸施策を推進してきた。

 しかしながら、わが国経済は、前年度に引き続き新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う景気停滞を余儀なくされた。9月末に緊急事態宣言が解除され、政府による行動制限が解除されたことにより、年末にかけて経済活動は一時的に回復基調になったが、2022年に入ってからは新変異株(オミクロン株)により感染者数が急増し、ふたたび、政府によるまん延防止等重点措置が全国的に適用されるなど厳しい状況にある。

 また、輸送動向では2021年8月の大雨により山陽線や中央線が3週間にわたり不通となる自然災害や12月末の山陽線瀬野~八本松駅間における貨物列車の脱線事故が発生した。2022年に入り北海道、北東北、日本海縦貫・上越線の各地区における相次ぐ雪害の影響もあり、お客様をはじめ、関係する方々に多大なご迷惑をおかけする結果となった。

 合わせてこのようなコロナ禍と自然災害、脱線事故の中でも、社員の皆さんの奮闘、協力のもと早期の復旧作業や代替輸送等の収入確保に努めて頂いたことには感謝申し上げる。

 しなしながら、昨日時点、1月期計画に対して取扱い収入が約▲23億円強と厳しい状況になっている。

 以上、現時点の会社の考えとしては「評価による昇給については実施するが、ベアを実施する判断に至っていない。」との考え方を示した。

【以下、主なやりとり】

(組合)現時点での会社の考え方が示されたが、「コロナ禍」や「自然災害」により1月期改定の計画からもショートしており、評価による定期昇給は実施するが「ベアを実施する判断に至らない」背景に、生活費や実質賃金の減少、ウクライナ情勢での燃料高騰など考慮しているとの理解となるのか。

(会社)ベアについては、減収により厳しい状況だが、公共料金の値上げなど物価上昇している現状を踏まえた上で「ベアを実施する判断に至っていない」ということである。

(組合)生計費の上昇も1つの判断要素であるが「ベアを実施する判断に至っていない」との考え方について曖昧である。

(会社)従来なら「実施できる状況にない」との考え方も示しているが、今年度は「実施しない」とも言い切れる状況にない。

(組合)国鉄労働組合は、ベア6,000円を求めており、この間のベア300円、200円と実施しており一定の評価はするものの社員の生活改善には程遠いものとなっている。現時点でベアに対する支払い能力はあるとの認識で良いか。

(会社)100円の原資でいくらになるなど含め、会社にお金があるのと、ベアの原資を確保しているのとは異なるものである。

(組合)確認であるが定期昇給については実施するとの理解で良いか。

(会社)過去の経緯もあるが、評価によって行う昇給については通常実施する考えである。

(組合)収入動向やこの間の内部留保、先行きについては明るいものと想定されるが、本来考え方を示す場であり、どのような根拠で難しいのか交渉で明らかにするべきである。

(会社)内部留保は現金としてあるのではなく、設備投資等に利用している。国鉄時代からの利益は、長期債務の返済や老朽設備の更新に充てており、一時期1,700億円まで膨れ上がり、内部留保は現金としては残っていない。

(組合)根拠のないまま会社の考え方が示されているのではないか。

(会社)決算の落着き見込みとしては大変厳しい状況と見ている。

(組合)諸元については示せるのか。ベア1,000円の原資はどのくらいになるのか。

(会社)諸元については回答時に提示したいと考えているが、ベア1,000円の原資は約1億5,000万円である。

(組合)内部留保については、国鉄分割・民営化で背負った長期債務の返済と老朽設備の更新などに対して高い金利の下で土地売却等により10年以上にわたり債務を返済してきたが、結果として当初の944億円の債務を上回る新たな借金を抱えたと認識している。1987年度から2009年度の間では老朽車両の更新、阪神淡路大震災や有珠山など自然災害に見舞われ、8期連続赤字に転落し、土地を売り資金調達していた経緯もある。2020年度末での利益剰余金は約400億円であり、2010年度から2020年度では東日本大震災にも見舞われながらも379億円の積み増しをしてきた。一方でベア300円、200円、賃金改善措置も行っているが生活改善には及ばない。賃金生活実態アンケ-ト調査にも表れており、社員の生活がそれだけ疲弊している。労働協約を改定した意義や1条の文言や、2020年までの利益剰余金の積み増しは「企業の健全な発展」「社員の生活の維持・向上」とはアンバランスであり、社員にも投資すべきである。

(会社)内部留保の考え方についての主張は理解するが、決算は厳しいことが想定され今回について会社の都合だけで言えば、ベアの実施は難しいが、物価上昇や燃料費高騰などある中で、現時点ベアを実施するとの判断には至っていない。

(組合)経費として事業計画策定に盛り込めば済む話である。将来に対して設備投資するのであれば社員への投資も行うべきである。署名の重みを受け止めるべきである。

(会社)経営陣には伝える。

(組合)11期連続黒字の中で、2010年度から2020年度の10年間で379億円の内部留保を積み増しできた経営の一方で、ベースアップと賃金改善含め700円に止まっている。最大の利害関係である社員に対して、ベアの実施で応えることを強く求める。

 貨物会社は、本日の22春闘第3回交渉の中で、「ベアを実施する判断に至っていない」との考え方を明らかにした。11期連続の黒字を達成し、設備投資は過去最高額の投資を今後も続けるとしている中で「ベアを実施する判断に至っていない」との考え方は認めるわけにはいかない。

 よって、本部闘指示第37号を発しているので、継続して要請行動を最大限取り組むこと。

以 上